先天的に体質が虚弱で、脾の働きが弱い人は、十分な量の精をつくって補うことができません。したがって、気や血もふだんから不足気味です。精は不足しているものの、腎そのものはまだ衰えていない状態ですから、高齢者よりも、むしろ若い人に多い病態です。
このような「失精」の状態にある人が、慢性的病をわずらったり誤った治療を受けると、全身を潤す水と、全身を温める火がともに不足するようになります。その結果、全身の水をコントロールする腎を適度に温める心と、全身の火をコントロールする火を水で適度に冷やす腎の働きが、協調関係を失ってしまいます。このような「心腎不交」の状態では、水の不足によって相対的に余った火が浮き上がると同時に、火の不足によって冷たい水があふれるという、二つの病態が絡み合った症状があらわれます。 眼が疲れる・目に輝きがない・物がぼやけて見える・視力減退といった眼の症状の他、不眠・驚きやすい・物忘れ・夢をよく見る・遺精などの心腎不交による症状。 火の不足によって余った冷たい水が引き起こす、腹部の動悸・陰部の冷え・頻尿と尿量減少・下腹部の筋肉のひきつりといった冷えの症状。 水の不足によって余った火が引き起こす頭のふらつき・脱毛・舌の色が淡白などの症状を伴うのが特徴です。 相談の多い病名は、若い人の精力減退(インポテンツ)、高齢者の下着の汚れや陰部のにおい、性交中の中折れ現象。男性不妊などです。排尿後の尿漏れ現象による衣服の汚れはメール相談の上位を占めています。 処方は、桂枝加竜骨牡蛎湯が基本で、冷えがきつければ麻黄附子細辛湯の併用です。
by mkkiri
| 2014-02-01 10:31
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